ESTATE GUIDEエステートガイド
残金決済前に買主が死亡したら、売買契約はどうなるのでしょう。
売買契約締結後、決済・引渡し前に買主が死亡した。買主は、ローンの申込みはしていたが、その実行はなされていない。しかし、ローンの融資の内諾は得られています。買主が死亡しても、その地位(買主としての権利義務の一切)は相続人に承継されます(民法第896条)。相続人に売買契約を引き継ぐ意思がなければ、あとは解約手付の交付により解除権が留保されているのであれば、手付放棄により契約を解除することもできるし、ローン条項により契約を解除するということもできます。
本件の場合、融資の内諾が得られているといっても、それは死亡した買主との間の内諾であって、相続人との間のものではないので、通常の金融機関の扱いとしては、融資の申込みはなかったものとして扱われます。もし相続人が売買契約を引き継ぐということになれば、(保険金などで一括払ができるのならともかく)改めて相続人がローンの申込みをしなければならないし、その点についての金融機関や売主との対応も出てくるので、とりあえずは一旦白紙に戻す方向で対応するのが適当ではないかと考えられます。 また、相続人が複数の場合には、誰がその権利義務を承継するかという問題が生じます。それがはっきりするまでは、相続人全員が共同で相続することになります(民法第898条)。その間は、原則として相続人全員がその相続分に応じた権利義務を承継するということになりますが(民法第900条)、本件のような不動産(高額商品)の購入の場合には、(これから相続人が代金を支払っていくということになるので)その引き継ぎの有無については比較的早く結論が出るのが通常であり、すべての遺産相続が終了するまで待つというようなことにはならないと考えられます。