ESTATE GUIDEエステートガイド
賃貸借契約で、注意しなければならない点を教えて下さい。
マンション建設のため、資材置き場及び現場事務所設置用に私の所有する土地を一時的に貸して欲しいと申出がありました。土地は一度貸すと二度と戻らないという話はよく聞きますが、一時使用目的の契約であれば大丈夫と言われました。土地の賃貸借(借地契約)は、当事者の事情における様々なパターンによって、貸主、借主いずれの側にも、その権利義務に種々の制約が生じてきます。ご質問中にもあるように、「土地は一度貸せば二度と戻らない」という云われは、近代法整備がなされた明治後期から戦前戦後にかけて、建物ノ保護ニ関スル法律(明治42年法律第40号)借地法(大正10年法律第49号)借家法(大正10年法律第50号)の制定の目的である「借りる側の保護」を基本に運用されてきた結果、地主等貸す側の心情を表現した言葉です。 しかし、本問に言う「土地の一時使用」とは、建物の所有を目的としない土地の利用ですから、前述した種々の旧法や平成4年施行の「借地借家法(平成3年法律第90号)」とは全く無縁の法律行為であり、民法601条以下の規定が適用される(モノ全般の貸借)ことになります。従って貴殿がご心配されるところの「土地は一度貸せば二度と戻らない」と云われる理由、「借地権の存続期間」「借地契約の更新」「地代増減請求権」「建物買取請求権」などは認められず(ただし、任意で約定することは可能)、一定の期間(制限なし、例えば3日間でも可能)一定の賃料を支払うことを約し、期間の満了を以って無条件で土地を明け渡すことさえ約定しておれば何ら問題は生じません。大切なことは、賃貸借の大分類を目的が建物所有か非所有かで分けることです。
さて、ご質問者のなされようとする契約に必要な特約を最低限にまとめると次のとおりとなります。
1.契約の目的を明確に規定すること(建物非所有一時使用目的であること)
2.契約の存続期間を設定すること(更新を承諾する場合も回数、期間を明示すること)
3.現場事務所等の設置を承諾する場合も簡易な構築物に限り設置可能とし(宿舎等生活施設は避けるほうが無難)、登記させない旨を明確に記すること
4.賃貸人の義務について使用方法に沿った範囲で必要な規定をしておくこと