ESTATE GUIDEエステートガイド
仲介手数料は支払わないといけないのでしょうか?
中古戸建の売買契約を交わしたのですが、引渡し前に売主が契約解除してほしいと不動産会社から連絡がありました。手付金として245万円支払っていてます。契約解除の際は売主から手付の倍返しという契約です。しかし子どもの学校、これまでの気苦労、労力、これまで使った細々とした費用等、腹が立ってなりません。売主へ手付金倍返し以外に請求はできませんか。また、仲介不動産会社から「契約は成立しているので、手数料はいただきます」と言ってきました。
不動産取引は、契約行為の時より当該不動産の引渡しまでの期間が長期に設定された契約内容になっているため、価格の変動または危険負担や契約解除の問題など、種々のリスクを含んでおり、契約行為の段階で相当の注意を払い、ある程度予測される前記リスクを回避する手段を講ずるなどした上で、契約行為を行う必要があったとされます。本件において交付された手付金はご質問から判断すると解約手付であると推測できます。これは当事者の一方から相手方が契約の履行に着手するまでであれば、手付金を放棄または倍返しすることにより、一方的に契約を解除することができます。こうした解除が為された場合、相手方は損害賠償の請求はできないとされています。(民法557条)「履行の着手」とは債務の内容たる給付の実行に着手すること。すなわち、客観的に外部から認識し得るような形で履行行為の一部を為し、又は履行の提供をするために欠くことのできない前提行為をした場合を指す(最高裁判例昭和40年11月14日)といわれています。ですから、本件のような契約の締結行為から実際の物件引渡しまでに相当の期間がある場合、引渡し期日近くになるまで、双方が契約の目的達成のための実行行為に何ら着手しないことが予想され、その間に当該手付金特約による解除を申し入れられた場合、当然「履行の着手」はなく、契約解除が認められることとなります。貴殿の心情は理解できますが、契約とは法律行為であり、相手方に不法行為など特段の事情が無い限り、締結した特約に拘束されることは当然なのです。また、仲介した不動産業者から「仲介手数料を請求された」とのことですが、本件契約は手付金特約による解除が認められることから、有効に成立した契約として、不動産業者は報酬請求権を失わないと考えます。しかし、国土交通省告示の規定報酬はあくまで上限を定めたものですから、報酬の支払い額についての約定がなければ、本件契約の目的を完全に達成できなかったとして、受領した手付金の額等を考慮し、相当の額を定めるよう交渉してみてはいかがでしょうか。