ESTATE GUIDEエステートガイド
土地の賃貸契約は解除されてしまうのでしょうか?
土地を借りて建物(自宅)を所有しています。このたびその住宅を他人に賃貸したいと思っていますが、土地の賃貸借契約書には地主の承諾を得なければ出来ない事項として、「賃借人が本件借地権を譲渡し、または本件土地の転賃するとき、その他名目のいかんを問わず、事実上これらと同様の結果を生ずる行為をするとき」との約定があります。また、「賃借人が本件土地上に所有する建物を改築または増築するときも同様とする」との特約もあります。
借地上にある建物を他人に貸した場合、建物の借主は、現実には土地も使用することとなります。しかし、法律上は、その土地を使用しているのは、建物の所有者です(土地の賃貸借契約に基づく)。建物所有者は、借地上に建物を所有することにより、当然に土地を使用しているという関係に立ちますので、原則として借地人は建物を自由に他に貸すことができるわけです。それを制限する特約は、建物所有者の権利を余りにも規制するため無効であると考えることができます。しかし、私的自治、契約自由の原則もあります。地主は、自己の土地を実際に誰が使用するかについては合理的な利害関係を有していますので、この特約(建物所有者の権利を制限する)にも合理的な理由があります。浦和地裁・昭和58年1月18日(判例タイムズ496-129)の判決は、「建物所有を目的とする土地賃貸借契約に関する調停において、借地上の建物の賃貸を禁止し、賃借人が右禁止に違反したときは、賃貸人は契約を解除することができるとし、その場合、賃借人は土地を明け渡す旨定めた調停条項に基づく土地明渡しの強制執行を認める」としました。つまり、地主と借地人の間で、建物賃貸を禁止する契約を結んだ場合、借地人がこれに違反すると、地主が土地の賃貸借契約を解除できるということです。従って、無承諾の建物賃貸を禁止するとの条項は有効となる可能性が大きいと考えます。 また、前述の論理から原則として増改築も自由と考えられます。建物所有目的で借地契約をした場合、契約の範囲内であればどんな建物を建てるかは自由ですし、その後増改築をする場合にも、原則として契約の範囲内であれば自由に行うことができるのは当然でしょう。ただし、借地契約に、増改築禁止特約が付されている場合、当該増改築によって法律上の借地期間が延長されたり、底地価格に影響を及ぼしたりすることが考えられ、地主にとって不利益になる可能性があることから、特にそのような制限を有効としているのです。